【1974】 ○ ヘティ・マクドナルド 「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第14話)/殺人は容易だ」 (09年/英・米) (2012/03 NHK-BSプレミアム) ★★★☆ (○ ポール・マクギガン 「SHERLOCK(シャーロック)(第1話)/ピンク色の研究」 (10年/英) (2011/08 NHK-BSプレミアム) ★★★★)

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「アガサ・クリスティー協会」公認の改変とはいえ、大枠からしてどうみても改変過剰気味。

殺人は容易だ.jpg 第14話「殺人は容易だ」011.jpg SHERLOCK A STUDY IN PINK.jpg 
アガサ・クリスティーのミス・マープルDVD-BOX4」「SHERLOCK / シャーロック [DVD]」【収録話数】第1話:「ピンク色の研究」(A Study in Pink)/第2話:「死を呼ぶ暗号」(The Blind Banker)/第3話:「大いなるゲーム」(The Great Game) 

Marple - Murder is Easy  title.jpg 地方の村の教区の牧師が養蜂作業中に毒を吸い込んで死ぬ。ミス・マープル(ジュリア・マッケンジー)は列車内で村の老婦人ラヴィニア・ピンカートン(シルヴィア・シムズ)に出会うが、彼女は牧師の毒死も以前に村で起きた老婦人の毒キノコ中毒死も何れも殺人事件だと言い、捜査依頼のためロンドン警察へ行くところだと。彼女は「殺人は容易だ」と連続死を仄めかすが、その直後、乗換駅で何者かにエスカレーターで突き落とされて死亡する。
Marple - Murder is Easy 1.jpg 新聞でその死亡記事を見たミス・マープルは葬儀に参列し、植民地から来た元警官ルーク・フィッツウィリアム(ベネディクト・カンバーバッチ)と知り合ってホテルに間借りし、共に謎解きを始める。ラヴィニアの予言通り、今度はハンブルビー医師(ティム・ブルック・テイラー)が敗血症で死亡するが、その夫人ジェシー(ジェンマ・レッドグレイヴ)は夫の死に疑問を持っていない。

Julia McKenzie/Benedict Cumberbatch

James Lance / Shirley Henderson / Russell Tovey
第14話「殺人は容易だ」06.jpg第14話「殺人は容易だ」02.jpg第14話「殺人は容易だ」07.jpg その娘ローズ(カミラ・アーフウェドソン)、彼女と恋仲でハンブルビーの後継のトーマス医師(ジェイムズ・ランス)、退役軍人ホートン少佐(デヴィッド・ヘイグ)、公立図書館員アボット(ヒューゴ・スピア)、教会のオルガン弾きオノリア(シャーリー・ヘンダーソン)、メイドのエイミー(リンゼイ・マーシャル)といった面々に若い捜査官テレンス・リード(ラッセル・トビー)はマープルの助言をもとに聞き込みを行う―。

 2008年制作のグラナダ版第4シーズン第2話(通算第14話)で(本国放映は2009年)、第3シーズンまでミス・マープル役を務めたジェラルディン・マクイーワン(Geraldine McEwan、1932‐)が退き、第4シーズン通算第13話からジュリア・マッケンジー(Julia McKenzie、1941-)がミス・マープルを演じています(吹替版の声の担当は藤田弓子)。

殺人は容易だ[装]上泉秀俊 pm.jpg 原作『殺人は容易だ』は、1939年にクリスティが発表した「バトル警視もの」でミス・マープルは出てきませんが(といってもバトル警視も最後ちょっと出てくるだけで、中心となる探偵役は元警官ルーク)、この映像化作品ではマープルがルークや若い捜査官テレンス・リードと協力して事件を解決します(と言っても、解決するまでにいっぱい人が死ぬわけだが)。

MURDER IS EASY 2008 リディア.jpg オノリアには知的傷害者の弟がいて、昔、泥酔して川に落ちて死亡しており、エイミーは、教会で何かを告解しようとしていた矢先に帽子塗料をセキ止め薬と誤飲して死亡(彼女は妊娠していた)、ホートン少佐は議員選挙に出馬するつもりだったが、過去の買収行為をネタに脅喝されて出馬を取りやめ、それに落胆したかのようには妻リディア(アナ・チャンセラー)が浴室で死亡、インスリンの過剰注射による自殺と思われたが―。牧師、老婦人、医師、メイド、少佐夫人と、ホント次々と人が死ぬなあと。

 ここまで5人死ぬのは原作と同じ。但し、原作で亡くなるのは、老婦人、医師、メイドの外は、飲んだくれの居酒屋亭主ハリーが川に落ちて死に、嫌われ者のいたずら小僧トミーが博物館の窓を拭いているときに墜死、この映像化作品でルークが村に入ってから亡くなる医師、メイドも含め5人とも、ルークが村に入る前に亡くなっており、ルークが村に来てから更に1人死にます。原作の方も人物が錯綜していて、これを更に改変して93分位に詰め込んでいるだけに、テンポはいいけれど人物の相関関係を追うのがたいへんかも。

Margo Stilley(マーゴ・スティリー) in MURDER IS EASY
第14話「殺人は容易だ」03.jpg第14話「殺人は容易だ」08.jpgMarple_Murder_is_easy2.JPG 原作の先入観無しで見ると、ベネディクト・カンバーバッチが演じる元警官が先ず怪しげな雰囲気ですが、しばらくすると今度はアメリカから教会に古文書の拓本を採りに来たというブリジット(マーゴ・スティリー)が怪しげに見えてくるかも(彼女は幼いころ親に棄てられた過去を持つ。その親とは...という話もこの映像化作品の全くのオリジナル。原作では、ブリジットは早くからルークと捜査上の協力関係となる)。

 原作に覚えがある人は、登場人物の造形や殺害方法などの"改変の妙"を楽しめるかも。夫が愛犬家だったのが、妻が愛猫家であることに変わっていたり、交通事故死がエスカレーターでの事故死になっていたり...。

MURDER IS EASY 2008.jpg 但し、こうしたトリビアな改変はさておき、大枠そのものについても「アガサ・クリスティー協会」公認の改変とはいえ、どうみても改変過剰気味で、結局、何と犯人まで改変されていたけれど(完全に別個の犯人当てクイズみたいになっている。原作にこだわりを持つ人には受け容れられないだろう)、原作では犯人はサイコっぽいシリアルキラーという印象でしたが、この作品では、人間の原罪を背負った悲劇的人物という描かれ方をしている印象もあり(これも原作には無い近親相姦の話が絡んでいる)、一方で、ミス・マープルが謎解きと犯人への追及を同時に行うため、クライマックス場面は結構キツイ感じの作りになっています。
Margot Stilley
Margot Stilley.jpgPicture of Margo Stilley.jpg 別の意味で楽しめたのは、'10年にTVシリーズ「SHERLOCK (シャーロック)」の主役に抜擢されることになるベネディクト・カンバーバッチ(一度見たら忘れられない英国俳優)演じるルークと、スタイル抜群のマーゴ(マルゴ)・スティリー(アダルト女優からセレブ女優へ転身?)演じるブリジットの遣り取りで、"将来のシャーロック"は、魅惑的な謎の女ブリジットに惹かれるも、ずっと彼女に翻弄されっぱなしで、でも最後は何となく脈ありの雰囲気で終わる―という、ドロドロした話にしてしまった後の"口直し的ラスト"とも言えますが、事件解決によって明らかになったブリジットの"出自の重さ"を考えると、こんなんでいいのか~という、やっかみめいた感想も抱かざるを得ませんでした(改変も含め、トータルではそれなりに楽しめたが)。

SHERLOCK s1.jpgピンク色の研究.jpg 因みにTVシリーズ「SHERLOCK」は、ドイルの原作でホームズとワトスンが初めて出会う『緋色の研究』を読んだうえでシーズン1第1話「ピンク色の研究」を観ると、今風にアレンジされた"改変の妙"が効いていて、ベネ君の英国俳優らしい雰囲気と併せて、これ、かなり楽しめます。

ピンクの研究5.jpg ワトスンが、軍医として従軍したアフガン戦争で負傷して右足が不自由なうえに、戦争トラウマにより左手に断続的な痙攣があって職業生活に困難をきたし、 物価の高いロンドンで暮らしていくため必要に迫られて下宿をシェアできるルームメイトを探し、そこでホームズと出会うという設定になっていて、まずホームズは初対面のワトスンを一目見て、彼の経歴や現況からからストレスの原因まで全て言い当ててしまう―というのはお約束通りでしょうか。ワトスンがそうしたホームズのことを最初は気味悪く思いながらも、彼を通して次第にトラウマを克服していく一方、やや引き籠り傾向のあるホームズも、ワトソンを通して現実社会との関わりを保っていくという両者の"共生"関係のようなものが、第1話にして分かり易く示唆されていたのは、今思えば、かなりの"巧みの技"だったかも。やはり、目の肥えた視聴者が多い英国だと、ただ改変すればいいということでは済まないのだろうなあ。

ピンク色の研究 dvd.jpgピンク色の研究 04.jpg「SHERLOCK(シャーロック)(第1話)/ピンク色の研究」」●原題:SHERLOCK:A STUDY IN PINK●制作年:2010年●制作国:イギリス●演出:ポール・マクギガン●脚本:スティーブン・モファット/マーク・ゲイティス●出演:ベネディクト・カンバーバッチ/マーティン・フリーマン/ルパート・グレイヴス/ウーナ・スタッブズ●日本放映:2011/08●放映局:NHK-BSプレミアム(評価:★★★★)
SHERLOCK / シャーロック [DVD]」【収録話数】第1話:「ピンク色の研究」(A Study in Pink)/第2話:「死を呼ぶ暗号」(The Blind Banker)/第3話:「大いなるゲーム」(The Great Game)

Margo Stilley 5.jpgMarple - Murder is Easy 1.5.jpg「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第14話)/殺人は容易だ」●原題:MURDER IS EASY, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 4●制作年:2008年(本国放映2009年)●制作国:イギリス・アメリカ●演出:ヘティ・マクドナルド●脚本:スティーヴン・チャーチェット●原作:アガサ・クリスティ「殺人は容易だ」●時間:93分●出演:ジュリア・マッケンジー/ベネディクト・カンバーバッチ/シャーリー・ヘンダーソン/マーゴ(マルゴ)・スティリー/アナ・チャンセラー/ジェンマ・レッドグレイブ/カミラ・アーフウェドソン/デビッド・ヘイグ/ヒューゴ・スピア/ラッセル・トビー/ジェームズ・ランス/ティム・ブルック・テイラー/シルビア・シムズ/リンゼイ・マSHERLOCK (シャーロック) .jpgーシャル●日本SHERLOCK.jpg放送:2012/03/20●放送局:NHK‐BSプレミアム(評価:★★★☆) Margo Stilley(マーゴ・スティリー)

「SHERLOCK (シャーロック)」SHERLOCK (BBC 2010~) ○日本での放映チャネル:NHK‐BSプレミアム(2011~)

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